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技術情報 技術説明

技術情報

破壊靭性 (KJC)

概要

破壊靭性は外力が加わる時に亀裂伝播に対する材料の素材抵抗性を表す指標で、亀裂先端部で吸収されたエネルギーを意味します。

計装化押込み試験(IIT)を通じて破壊靭性(KJC)を評価するため、破壊試験中に吸収されたエネルギーと押込み試験で特定破壊開始点に該当する臨界押込み深さまで蓄積された変形エネルギーを相関させて評価します。これは押込み試験で亀裂先端と類似の応力状態を再現し、破壊エネルギーを定量化する方式です。

IITと破壊靭性の測定原理
破壊試験で亀裂周辺に外部荷重が加わると、亀裂先端に高い応力と変形が集中されます。IITでも同様に、フラットパンチ押込み子を使い表面に3軸応力状態を形成し高い塑性拘束効果を誘導します。この時、押込み子の端部応力集中が従来破壊試験片(CRB)の亀裂先端応力集中と類似して現れます。(図1参照)
図1. フラットパンチ押込み試験片とCRB試験片の応力状態比較
図1. フラットパンチ押込み試験片とCRB試験片の応力状態比較
臨界押込み深さの決定と破壊有効ひずみ
亀裂先端開口変位(CTOD)試験で亀裂伝播が始まる破壊時点を基準に、IITでは破壊ひずみに到達する時の深さを臨界押込み深さとして決定します。 この深さはフラットパンチ押込み荷重-深さ曲線の主要変換点と関連します。(図2参照)
図2. 破壊有効ひずみを利用した臨界押込み深さの決定
図2. 破壊有効ひずみを利用した臨界押込み深さの決定
フラットパンチ押込み曲線の主な区間と変換点
フラットパンチ押込み曲線は大きく弾性、塑性、線形変形加工の3領域に分けられます。延性材料と脆性材料は押込み曲線の形状によって破壊形態が異なり、相対変換係数(RTF)でこれを区別できます。RTFが0.2未満の場合は脆性破壊、0.2以上の場合は延性破壊に分類されます。
図3. フラットパンチ押込み曲線の主な区間と変換点
図3. フラットパンチ押込み曲線の主な区間と変換点
IITによる破壊靭性評価
フラットパンチ押込み曲線の臨界点までの面積から破壊靭性を算出し、実験との比較結果、金属材料の場合IIT測定値は実験結果と比較して20%以内の誤差範囲で示されました。これは臨界押込み深さまで蓄積された変形エネルギーが破壊に要するエネルギーと密接な関係があることを意味し、IITによって正確な破壊靭性評価が可能であることを示します。(図4, 5参照)
図4. CRB試験片とフラットパンチ押込み試験片の塑性領域比較
図4. CRB試験片とフラットパンチ押込み試験片の塑性領域比較
図5. IIT測定値と実験値の破壊靭性比較
図5. IIT測定値と実験値の破壊靭性比較